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欄干に踊る女

パリのセーヌ川に架かる幾つもの橋。その中でも一際美しいと言われる橋が、アレクサンドル3世橋。19世紀の末に建造されたこの橋は、ロシア皇帝アレクサンドル3世の名が付けられている。欄干には、アールヌーヴォーの街灯が並び、天使や女神の装飾が施されている。

 

私はパリの橋が好きだ。それぞれの橋に表情が有り、物語が潜んでいる。

パリに住む人々の生活と共に緩やかに流れてゆくセーヌ。橋の上からセーヌの川面を眺めていると、この街の人々の喜びや悲しみの一齣を、垣間見ることが出来るような気がするのだ。

 

Des image de Pont AlexandreⅢ : http://www.igosso.net/se.cgi?q=Pont+Alexandre

 

 

「欄干に踊る女」

 

 アレクサンドルⅢ世橋の欄干の上で、マドモワゼル マルティーヌ・デュポンが踊る。

 

 ひと気の絶えた真夜中の街を濡らす、冷たい雨に打たれながら、マルティーヌ・デュポンは、欄干の上で器用に踊り続ける。

 

 古びたガス灯の薄明かりに照らされて、一尺半幅の石の欄干の上で、マルティーヌは見事に踊る。

 

 踊り終えたマルティーヌは、私のもとに駆け寄って、

「今夜は先に帰っていて。少し用があるから。私もじきに戻るわ。」と、耳元でささやく。

...........(続きはpdfファイルで)

 

 

Pass ward:「欄干に踊る女」(rankan)

 

 

 

 

rankan ni odoru onna.pdf
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Bonjour Mademoiselle !

若かりし頃、パリに遊学していたことは、前に書いた。

住んでいたところは、パリの18区、モンマルトルの丘の裏側にあたる、Rue Caulaincourtの60番地のアパート。今もそのままの建物だ。

 

当時私はよく散歩をした。アパートを出て目の前のCaulaincourt通りを右に少し行き、avenue Junotを右に曲がる。緩やかな坂道が続くが、この辺りは閑静な住宅街。一戸建てのような家もあるので、さぞかし裕福な人々が住んでいるのであろう。この道をそのまま真っ直ぐ進むと、サクレクール寺院に続くノルヴァン通りに繋がっている。マルセル・エイメの小説「壁抜け男」そのままの彫刻を、このノルヴァン通りの石の壁に見ることが出来る。(私が住んでいた1970年代にはこの彫刻は無かった。1982年フランスの著名な俳優で彫刻家のジャン・マレが造ったそうだ)

 

数多くの芸術家、小説家、音楽家が暮らしていたこのモンマルトル界隈は、いまでも、往時の雰囲気を残している。

パリに行くと、この辺りを歩きたくなるのは、若かりし頃へのノスタルジーなのかもしれない。

 

 「Bonjour Mademoiselle !」

 

 朝700 いつものようにコーランクール通り60番地のアパートを出て、サクレクールあたりまでの散歩が始まる。

 古い石畳の道を暫く行くと、緩やかな勾配の坂道を下って来る、いつもの娘に出会う。

Bonjour Mademoiselle ! Ça va ?

Bonjour Monsieur, oui ça va

「いいお天気ですね」

と、とりとめのない話を、私は始める。

 話の内容など、どうでもいいのだ。

...........(続きはpdfファイルで)

 

 

Pass ward:「Bonjour Mademoiselle !」(bonjour)

 

 

Bonjour Mademoiselle !.pdf
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肉の崩壊 La vie dans le noir

「肉の崩壊」というこの作品も、やはり私がパリに遊学していた同時期の作品である。

これもフランス語の授業での散文の課題であった。

今読み返すと、確かに教師が私の精神状態を心配したのも、不思議ではない。

だが私の頭の中には、いつもこんなイメージが渦巻いていた。 それは今でもさほど変わりはないのかもしれない。

私を知る人間にとっては、作品と私自身の姿が、必ずしもイコールではないと分ってくれようが、それでもやはり、私の精神は闇の中に浮遊し続けているのであろうか。

 

「肉の崩壊」

 私の体は、確かに腐りかけていた。体を動かすたびに、関節はぎしぎしときしみ、肉はぼろぼろと崩れ落ちていく。大空をちらと垣間見ながらも、そこへ飛んで行くこともできずに死んでいく、羽を切られた篭の鳥のように、私もこの精神の暗闇と、肉体の腐敗の呪縛から逃れることができない。

 

 いつも夕暮れになると、決まって聞こえてくる隣の少女の苦悶と恐怖に満ちた呻き声が、私の体の腐敗を早める。しかしそれも私に責任があるのだ。・・・・ある日の夕暮れ、ふと歩きたくなって、黒いマントをまとい、黒い帽子を被って外へ出てみると、丁度家の前の路地の向こうから、あの少女がやってきた。なんと美しい少女であったろうか。

...........(続きはpdfファイルで)

 

 

La vie dans le noir

 

Il était indubitable que mon corps commençait à pourir. Chaque fois que je remuais, les jointures grinçaient et la chair tombait en lambeaux. Comme l'oiseau aux ailes coupées dans la cage : celui qui va mourir sans réussir à voler jusqu'au ciel qu'il a aperçu quand même , moi non plus, je ne peux fuir de l'obscurité de mon esprit et de l'imprecation de la pourriture de mon corps.

 

Le gémissement de jeunne fille voisine, plein d'angoisse et de peur, que j'entends tous les soire, avance la pourriture de mon corps. Mais c'est moi qui en suis responsable. Un soir, quand je suis sorti de la maison, ayant envie de me promner, en mettant le manteau et le chapeau noirs, j'ai vu cette fille venir d'au delà d'une venelle devant ma maison. Quelle belle fille elle-était!

 

 

Pass ward:「肉の崩壊」(nikuno)

               :「La vie dans le noir」(vienoir)

 

 

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la vie dans le noir.pdf
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薄明の記憶 Le souvenir de l'aurore

「薄明の記憶」と云う作品は今から40年程前、私がパリで学生生活を送っていた頃の作品である。フランス語の授業で、散文の課題が有り、これが出来上がった。

 

当時私はこんなものばかりを書いていたもので、教師から「あなた、いつもこんなことばかり考えているの?一度psychiatreと話をした方がいいかもしれないわ。知り合いを紹介するわよ」等と言われ、慌ててしまった覚えがある。「私の精神状態と書かれた散文の内容と、一緒にしてもらっては困る」と教師を説得して、漸く理解してもらった。笑い話のような話だ。

 

私はアリアンスフランセーズと云う語学学校の教師の家に下宿していたのだが、この話をすると大笑いしながらも、「あなたの書いた散文を読ませて。家で朗読会をしましょう。」と言ってくれたのだった。彼女も自分の詩集を出版しており、にわかに友人たちを集めて、自宅のサロンでの詩の朗読会となった。

若かった私には、まるで物語に出て来る文学サロンの中に居るような心地であった。

良き時代のパリの想い出である。

 

 

「薄明の記憶」

 河に身を投げた、あの日の少年を知るものは誰もいない。

渦の中に引き込まれていく、蒼ざめたその顔付きに、私は何を読み取れたというのか。関わりは瞬間的なものであった。重く垂れ込めた灰褐色の雲間からは、きらめく陽光を期待することは絶望的であった。

 

 ひどく寒い日々、寡黙の中で、浮遊するエスプリの陰影を求め、ひびいる頭骨の隙間から外界を垣間見ると、人々は皆自分を閉ざし、凍てついた街路を、憑かれたように歩き回っていた。焦燥と悔恨の交錯する中で、私は一人、閉ざされた部屋にうずくまるようにして慄えた。

...........(続きはpdfファイルで)

 

Le souvenir de l'aurore

 

  Personne ne connait ce garçon qui s'est jeté à la riviére ce jour-là. Qu'ai -je pu lire sur son visage pale entraîné dans un tourbillon. Un lien est passé instantanément. Il est désespérant de s'attendre à l'éclat du soleil dans les lourds nuages gris bruns,

 

 Les jours très froids, quand j'aperçois le monde extérieur par la fente du crâne fêlé en cherchant l'ombre de l'esprit flottant dans le mutisme, tous les gens ferment leur cœur, et marchent dans la rue gelée comme démoniaques. Dans la confusion de l'irritation et du repentir, je tremble seul en me recroquevillant dans la chambre fermée..........

 

 

Pass ward:「薄明の記憶」hakumei)

               :「Le souvenir de l'aurore」(souvenir)

 

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